当店は今年で創業107年を迎えました。
初代の後藤重助は、大地主の実家で育ったためかハイカラで、秋田市通町に店を出してからも牛鍋を食べながら黒ビールを飲んでいた程の美食家でした。当時は珍味類や漬物、下り酒(奈良、神戸、京都など)を取り扱っていたようです。店というものは、初代が苦労して財を成し、後継ぎが楽をし過ぎて看板を降ろす羽目になるというのが世の常ですが、当店は違っていたようです。
二代目は、お婿さんがたいそう働き者で、朝から晩まで稼いでいたひとでした。健康で長生きした人でしたが、第二次大戦中の品不足の中、売るお酒もなく畑を耕して食いつないでいました。戦後はまだ無名だった「高清水」を一生懸命売っていたようです。
三代目の父は旧高等専門学校を卒業し、戦争中は軍事工場に勤めていましたが病気で働けなくなり、帰省して家業を手伝っていました。味噌醤油の卸売りに精力を注ぎ、常に忙しそうではありましたが、やりがいを感じていたのが伝わってきました。
四代目の私はとにかく本物を売りたいという気持ちがありました。昭和55年当時のキャッチフレーズは「本物をあなたに」。当時の日本酒界隈は二級酒(普通酒)の全盛期で、純米酒の市場はほんの数パーセントしかありませんでした。米と水と酵母で醸す本物の日本酒を世に知らしめたい、そんな思いから日本酒業界に一石を投じるべく、昭和57年に純米酒のにごり酒を蔵元と一緒に発売したことを昨日のように思い出します。
お酒の流行・好みは変化していきますが、吟味された原料、確かな技術、丹念に製造して調和のとれた日本酒は、いつの時代にも舌の肥えたお客様に愛されるに違いないと私は信じております。
味覚鍛錬は気力と体力で養われるものです。それも日々年齢とともに衰えていきますが、健康に気を付けてレベルを維持するように努め、これからもお客様に喜ばれるお酒を発掘し続けたいと思っておりますので、より一層のご愛顧をよろしくお願い申し上げます。